ウィリアムズ症候群患者における感情準備刺激



Emotion Priming in People with Williams Syndrome.

Hsu CF(1)(2), Lv P(1)(2).
Author information:
(1)Laboratory for Language Pathology and Developmental Neurosciences, Hunan
University, Changsha 410082, China.
(2)School of Foreign Languages, Hunan University, Changsha 410082, China.
Brain Sci. 2023 Mar 9;13(3):467. doi: 10.3390/brainsci13030467.

感情カテゴリーはヒトの認知構造に関す基礎的意味知識を構成する。ウィリアムズ症候群に対する先行研究では、彼らの基礎的感情と感情価(emotional valence)の次元を処理する能力を調査した(訳者注:資料番号3-9-475)。ウィリアムズ症候群の語彙単語の従属的展望からの感情カテゴリー分類についてはほとんど解っていない。本研究では感情準備刺激を研究パラダイムとして使用した。刺激としての3種類の感情価、すなわち、正・中立・負である。各感情価は、3種類の感情価と同じタイプの準備刺激として検査に用いられる。準備刺激と対象刺激が同じ感情価かどうかを全被験者に判断するように求めた。ウィリアムズ症候群患者(n = 14, 男性11/女性3, 暦年齢 = 10.49, 精神年齢 = 6.57)は定型発達をした対照群と同じような感情価の準備刺激パターンを示した。正の準備刺激が提供された場合、対象刺激が中立の場合に比べて正もしくは負の刺激の方が正確性は高い。中立の準備刺激が提供された場合は、対象刺激が負の場合に最も正確性が高い。負の準備刺激が提供された場合は、対象刺激が負の場合が最も正確性が低い。全被験者は正の感情の場合に最も準備刺激の正確性が高くなるが、正の対象刺激に対する中立の準備刺激で混乱した。負の対象刺激に先立って負の準備刺激が提示された場合、負の準備刺激効果が観察された。ウィリアムズ症候群患者は怒りや驚嘆などの基礎的感情に関して発達遅滞を示すという先行研究の知見を考慮すると、本研究はウィリアムズ症候群患者が感情価の分類に関しては正確に反応していることが結論付けられる。ウィリアムズ症候群患者の感情の分類に関する今回の発見は、彼らの感情知識や社会情緒的認知に関する我々の理解を進めるだけではなく、ウィリアムズ症候群患者が概念変化に弱いにも関わらず、表面的には語彙の意味論に優れていることが確認できる。ウィリアムズ症候群患者におけるこの弱点は、文脈前後関係の統合に障害があることが原因である可能性がある。

(2023年4月)



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