ウィリアムズ症候群における視覚情報処理:典型的な視空間障害と共存する障害を受けていないモーション知覚



資料番号3−9−79の「 Williams 症候群における視覚認知背側経路の障害の検討」と同様の内容です。

(2002年11月)

−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−

Visual information process in Williams syndrome: intact motion detection accompanied by typical visuospatial dysfunctions.

中村 みほ, 金桶 吉起, 渡邊 一功, 柿木 隆介
Department of Integrative Physiology, National Institute for Physiological Sciences, Myodaiji-cho, Okazaki 444-8585,
Japan Department of Therapeutics, Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, Kasugai 480-0392,
Japan Department of Pediatrics, Nagoyga University School of Medicine, 65 Tsurumai-cho, Nagoya 466-0065, Japan.
Eur J Neurosci 2002 Nov;16(9):1810-1818

ウィリアムズ症候群児に見られる視空間認知障害は視覚情報処理システムの背側経路の機能障害に関係していると言われている。我々は背側経路の主要機能のひとつである視覚によるモーション知覚がウィリアムズ症候群で同様に障害を受けているかどうか調査した。一人のウィリアムズ症候群の典型的な特徴を有するウィリアムズ症候群児に対して様々な実験心理学課題と磁気的脳撮影法を用いて検査を行った。既によく知られているように、視空間認知機能の深刻な障害が見られた。一方で、彼は点がランダムに動く背景上で一定の方向に移動する動きを検出する能力は正常であり、見かけの動きを理解する能力は健常児と同等である。さらに、磁気的脳撮影法を使って測定した、一様な(coherent)モーションや一様ではないモーションの両方に対する反応時間(latencies)は、健常な成人における平均値から標準偏差の2倍以内の領域に入っている。推定された起点は、ヒトにおけるV5/MT野(第5視覚野/側頭中央部)相同部分である。この結果はウィリアムズ症候群においては視覚的モーション知覚の障害を伴わずに視空間認知障害が起こることを示している。我々はこの障害が視覚機能の背側経路に存在し、位置や三次元形状知覚を司る神経細胞集団だけに限定された機能障害が原因でると考えている。ただし、他の可能性を否定するものではない



目次に戻る