Williams症候群の小児期を振り返る ― 成人期患者の親へのアンケート調査から ―
鬼頭 由子1、2)、岡崎 伸3)、富和 清隆1、3、4)
1) 元京都大学大学院医学研究科遺伝カウンセラーコース
2) 京都大学大学院医学研究科生育看護学
3) 大阪市立総合医療センター小児神経内科
4) 東大寺福祉療育病院 小児科
日本遺伝カウンセリング学会誌 第32巻第2号 97ページ(2011年5月)
ウィリアムス症候群における成人期の現状:親とスーパーバイザーへのアンケート調査も参考にしてください。
(2011年9月)
−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−
【背景】
Williams症候群は、妖精様顔貌・精神発達遅滞等を特徴とする7番染色体微細欠失による隣接遺伝子症候群である。成人期を迎えた時に小児期について振り返ることにも意味があると考え、生活上の課題について成人期患者の親へ調査を行った。
【目的】
【対象と方法】
京都大学附属病院遺伝療育外来または大阪市立総合医療センター神経遺伝外来に通院歴のある18歳以上の患者34名の親を対象に、医療や日常生活について、郵送による記名式アンケート調査を行なった。
【結果】
28名の親(82.4%)より回答を得た。患者の平均年齢は25.3歳(19歳〜36歳)で、男性15名(53.6%)、女性13人(46.4%)であった。身体面の問題として困っていることは、運動や発達の問題25人(89%)、嘔吐や偏食などの食事の問題23人(82%)、音の問題22人(79%)、体重増加不良と言葉の問題19人(68%)、心疾患13人(46%)、高カルシウム血症と腎疾患1人(89%)がみられた。この時期の親が困ったこととしては、よく泣くことと睡眠障害、多動、などの認知・行動面の問題が最も多く、次いで身体面の問題、発達・発育の遅れについてが挙がっていた。学校は、義務教育期間は特別支援学級への通級が、義務教育以降では特別支援学校高等部が多かった。患者が受けた教育について、14人(89%)の親はほぼ満足と回答し、学校生活が充実したものになるがどうかは、担任の教師次第と感じた。
【考察】
患者の身体的な問題がさほどみられない場合は医療機関を受診する機会が少なく、家族の相談の場は限られるため、相談したいことがある場合でも悩みを抱え込んでしまうのではないだろうか。家族が支援を必要としている時期に支えとなれるよう、医療関係者がWSについて十分な理解をした上で、身近な相談相手となり、適切な対応が取れる体制を構築することが重要だと考える。
目次に戻る