ウィリアムズ症候群の家族を対象とした生涯発達支援プログラムの構築
根津知佳子1)、和田直人1)、安藤朗子1)、甲斐聖子1)、吉澤一弥2)
1)日本女子大学家政学部児童学科
2) 日本女子大学名誉教授
日本女子大学総合研究所紀要 第27号(令和7年1月)185-240
本研究課題80「ウィリアムズ症候群の家族を対象とした生涯発達支援プログラムの構築」は、研究課題69(2018年度〜2019年度)「ウィリアムズ症候群の視空間認知の特性と研究〜主として投影法心理検査を用いた解析〜」および、研究課題76(2021年度〜2022年度) 「ウィリアムズ症候群のための“支援プログラム”の開発〜投影法心理検査を基盤として〜」の成果を基にした研究である。
さらに研究全体を俯瞰するならば、この一連の3課題は、ウィリアムズ症候群を対象とした筆者らの実践研究の第3期の研究に該当する。
時間芸術である音楽を軸とした活動を文字化することは困難であるが、本稿のIとIIでは、実践現場のニーズに則って開催している「音楽の森」のポスターデザインを通してウィリアムズ症候群の患児・者や家族支援がどのようにして変容したかを概観する。具体的には、音楽キャンプ創設期(第1期)および家族支援としての音楽キャンプの確立期(第2期)に関するIを根津が担当し、活動モデル形成期(第3期)のポスターデザインに関するIIを和田が担当する。
続くIIIでは、ウィリアムズ症候群のきょうだいを対象としたインタビューについて安藤が報告する。筆者らの実践では、ウィリアムズ症候群だけではなく保護者やきょうだい、そしてスタッフも能動的に活動することが特徴である。きょうだいグループのダイナミクスもまた音楽キャンプには欠かせないものである。音楽キャンプに長く継続して参加しているきょうだい3名のウィリアムズ症候群(同胞)との関係や家族関係についての考察を行う。
IVでは、家族支援のためのプログラムとして開発した「絵本を介した創造的音楽活動(デジタル化)」に関して、「成長」をキーワードに素材となった絵本の物質的構造や物語のプロットの整理、作者の活動歴や絵本観を示した上で、プログラムの成果物である5つの作品について考察を行う。
Vでは、課題80の学際的な意義について活動理論の視座で吉澤が論じる。多様なレベルのスタッフを含むキャンパーによる長期間にわたる活動であり、協働による創造的プロセスやダイナミズムを可視化するために活動理論の概念形成と胚細胞に着目して考察する。
最後にVIでは「実践複合体」としてのキャンプの可能性と課題について、吉澤と根津がまとめる。
ウィリアムズ症候群におけるライフステージ全体を視野に入れた発達支援方法の開発は、ウィリアムズ症候群のみならず教育・療育・保育・養育などに独創的かつ、学際的なプログラムを提供できることを展望している。この融合的共同研究のスタイルは、総合研究所の(4)日本女子大学を拠点とする学際的な共同研究・調査に該当する。
尚、本研究は、三重大学教育学部松本金矢教授と藤女子大学人間生活学部川見夕貴講師との協働である。
(2025年3月)
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