音楽的才能があるウィリアムズ症候群のお子さんがいるご両親へのハウツー
ウィリアムズ症候群の女性グロリア・レンホフ(Gloria Lenhoff)について書かれた本からの抜粋です。本の原題は「The (Strangest) Song: One Father's Quest to Help His Daughter Find Her Voice」で、資料番号2-1-46に概要が書かれています。
(2007年7月)
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A How-to for parents of musical Williams syndrome children
Howard and Sylvia Lenhoff
The (Strangest) Song: One Father's Quest to Help His Daughter Find Her Voice
ページ267-270 (ISBN 1-59102-478-1)
- どうやって始めるか?
とても幼いウィリアムズ症候群の子どもでも音楽を楽しむそぶりをみせます。彼らはたいていの課題には数分間でも集中できないかもしれませんが、音楽ならばもっと長い時間聴いていられます。4歳から5歳になるまでに、何曲かの歌を覚えたり歌えたりする子どももでてきます。その曲は童謡かもしれませんし、難しいクラシックである可能性もあります。ウィリアムズ症候群の子どものご両親の話を聞いていると、音楽を好んだり演奏したりする能力は幼い時から現われますが、能力が育つかどうかは両親の援助次第であることがわかります。
- 私たちは何をすればいいのか?
3つあります。まず初めに、お子さんに幅広い音楽を聞かせてください。娘のグロリアは乳児のころから音楽に囲まれ続けていました。時にはグロリアが腹痛で泣き叫び続けるのに耐えられなくて、音量を上げてクラシック曲を聴いたこともありました。グロリアが歩き始めてからは、小さな木琴のような簡単な楽器を含めていろいろな音楽的おもちゃを与えました。大きくなってからは、自分専用のラジオ・テープレコーダーを持ち、カセットテープを与えていました。後になってわかったことですが、グロリアは自室に一人でテレビを見ているときには、音楽番組か外国語教育の番組を探して見ることが多かったようです。このような経験の全てがグロリアの音楽好きと音楽能力につながっていると信じています。
- その次は?
お子さんが音楽に興味を示したら、自分で歌うように、あるいは家族や友達といっしょに演奏励ましてあげてください。グロリアの夜泣きが治まって夜に寝てくれるようになってからの我々家族にとっての楽しい思い出のひとつは、夕食後に娘と弟が家族のために度々開いてくれた演奏会でした。食器を片付けた後のキッチンのテーブルをステージ代わりにして交替で歌をうたいました。後には、私がギターで、妻がピアノで伴奏をするようになりました。子ども達が大きくなって、グロリアはアコーディオンが上達してからは、我々の出番はなくなりました。我々は忘れていたとしても、グロリアはこのころに覚えた歌のほとんど全てを今でも覚えています。
- 楽器を買い求める必要がありますか?
最初から大きな楽器は必要ありませんが、一連の単純なリズム楽器は準備しておくべきしょう。例えば、グロリアが自宅で家族や友達と一緒に曲を演奏する時には、長年にわたって集めてきた簡単なリズム楽器を手渡して、合奏に参加するように促しました。その楽器は次のようなものです:振って音を出すおもちゃ、本物のタンバリン、拍子木、おもちゃのカスタネット、マラカス、いろいろなガラガラ、沢山のベルがついたリング、床やおもちゃの太鼓をたたく、ハワイアンバンブースティック、紙やすりで木片をこする楽器、そして最後の最後に何も無ければ木のスプーンでポットやフライパンをたたく。そして芽を出しかけた将来のスターである子ども達をやる気にさせるのは、回りの人たち全員の手拍子です。今現在のようなコンピュータ全盛時代になる前にグロリアを育てたので、今なら利用できる新しい電子楽器には詳しくありません。カラオケテープも新しい歌をお子さんに教え、伴奏つきで歌うためには有益な道具です。私たちも何年かの間この方法を使いました。
- 楽器を選ぶ
お子さんが喜び、その子の身体や運動や認知面の制限条件に合った楽器を見つけてください。最初はボイストレーニングが最適ですが、クラシックピアノ・電子オルガン、ギター、バイオリン、サックス、クラリネット、オルガンなどが上手な子どももいますし、ドラムに類稀なる才能を示すひともいます。
- 先生を選ぶ
柔軟性が無く厳格な人を選んではいけません。最初に楽譜を読むことを強制することも避けてください。聡明でやさしい高校生か大学生にまかせてみてください。学校新聞に募集広告をだすといいようです。その後、臨機応変なプロの先生を探してください。先生には、一度に一ステップずつ教えること、そしてウィリアムズ症候群の音楽家達が直面している認知面や運動面の障害内容を伝えてください。子どもたちはグループレッスンよりも先生と一対一の指導方法のほうが向いているようです。耳で聞くことと真似ることが主要な学習方法です。
- テクノロジーを利用する
ウィリアムズ症候群の人たちに最も向いている音楽レッスンの方法は、レッスン内容をテープやCDに録音し、それを聞きながら毎日練習をすることです。もっと複雑な曲、例えば聞きなれない外国語の歌などの場合は、特別な録音方法を使うことが有効です。例えば、外国語の民謡の場合、まずそれを母国語とする歌手が歌い、その後曲の2から3語のフレーズをゆっくりと正確な発音で歌いながら、最後まで録音します。その後、生徒がそのフレーズを続けて発音できるようにテープに空白部分を入れ込みます。そのようなテープを聞いて毎日練習すると、外国語の曲を素早くマスターしてほとんど無限にレパートリーに加え続けられるウィリアムズ症候群の生徒もいます。
- 何歳から始めるべきか?
6歳でも、16歳でも、60歳でもかまいません。何歳でも適齢期です。ウィリアムズ症候群の場合、音楽を学ぶ窓はいつでも開いていて、大人になってからでも問題ありません。
- 両親の役割
両親は、援助を行い、励ましと賞賛を与えなければいけません。素晴しい才能を発揮しているウィリアムズ症候群の音楽家達には、たいていの場合積極的に関わる両親がいます。外の世界は偏見に満ちています。学校、教会、ユダヤ教会などの中でさえ、両親はこどもの擁護者である必要があります。そして自分の子どもが環境の中でうまくやれるように助ける必要があります。両親は子どものための演奏会をお膳立てすることも必要になります。しかし、一歩身を引くこと、そして子どもに自分自身の人生を歩かせることも学ぶ必要があります。
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