ウィリアムズ症候群における空間認知に関する詳細な分析:
LIMK1遺伝子の役割に関する臨界的評価
In-depth analysis of spatial cognition in Williams syndrome: A critical assessment of the role of the LIMK1 gene.
Gray V, Karmiloff-Smith A, Funnell E, Tassabehji M.
Psychology Department, Royal Holloway, University of London, UK.
Neuropsychologia. 2005 Oct 6; [Epub ahead of print]
LIMキナーゼ1タンパク質(LIMK1)は神経発達や脳の機能に関連していると考えられている。しかし、LINK1を含む部分的な欠失はあるがウィリアムズ症候群の典型的な症状がみられない患者から得られた認知機能に関する矛盾する報告があることから、このタンパク質がウィリアムズ症候群の患者の空間認知で果たしている役割ははっきりしていない。ウィリアムズ症候群責任領域の部分的欠失を有する2家族について視空間認知機能に障害がみられるという報告(Frangiskakis, J. M., Ewart, A. K., Morris, C. A., Mervis, C. B., Bertrand, & J., Robinson, et al.(1996). 視覚性空間認知障害に影響を与えるLIMキナーゼ1の半接合. Cell, 86, 59-69。一方で同様の部分的欠失を持ちながら空間認知障害が見られないという報告(Tassabehji, M., Metcalfe, K., Karmiloff-Smith, A., Carette, M. J., Grant, J., & Dennis, N., et al.(1999). ウィリアムズ症候群:認知的および身体的表現型に対する研究道具としての染色体微小欠失の利用. Am J of Human Genetics, 64, 118-125)もある。典型的なウィリアムズ症候群に合併する視空間障害に深く影響しているLIMK1の役割を理解するためには、この2つの研究の差異を調査することが非常に重要である。先行研究では空間認知機能を測定するための標準化課題が用いられたが、これはかすかな障害を計れなかった可能性がある。そこで我々はもっと広範囲に及ぶ課題を用いて、ウィリアムズ症候群責任領域の部分欠失(LIMK1とELNだけ)を有し、前回の研究では空間障害を認められなかった成人2名と、言語能力を一致させた高機能のウィリアムズ症候群成人2名の検査を行った。全参加者が16種類の知覚及び構築空間課題を完了し、ウィリアムズ症候群グループに見られた明確な空間障害が部分欠失グループには見られなかった。この知見は、LIMK1遺伝子の一つが欠失したことだけで空間障害につながるという主張を否定するが、ウィリアムズ症候群責任領域にある他の遺伝子と同時に欠失することでLIMK1がウィリアムズ症候群の認知障害に影響を与えるという可能性は否定されない。ウィリアムズ症候群において特定の遺伝子が外部に現れている表現型に与える影響を完全に理解するには遺伝子レベルでのさらになる詳細な評価が必要であるという結論に達した。
(2005年10月)
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