Williams症候群児の乳児に見られた象牙質異形成
下記で「深井らの報告」として参照されている論文は資料番号3-6-03と3-6-04のことだと推定されます。
(2006年5月)
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及川 透、八若 保孝、小口 春久
手稲渓仁会病院・小児歯科、北大・歯・病院咬合系歯、北大・院・歯学研究科口腔機能学
小児歯科学雑誌 Vol 42 No 1(通号144)、 2004年 125-126ページ
Williams症候群は第7染色体の遺伝子の欠落が病因と考えられ、精神発達遅滞、高頻度の心血管系異常、乳児高カルシウム血症、精神発達遅滞、発育遅滞などを合併し、妖精様顔貌が特徴とされている。口腔内ではエナメル質形成不全、形態異常、先天性欠如、歯列不正などが指摘されており、深井らは象牙質内に異形成構造物を報告している。今回我々はWilliams症候群児の歯科的管理を経験し、抜去乳歯を組織学的に検索した。
患児は、初診時年齢10歳10ヵ月の女児で乳歯の晩期残存を主訴に当科を受診した。患児は低出生体重で生まれ、生後10ヵ月時にWilliams症候群と診断された。また当科来院まで歯科受診はなかった。口腔内は乳歯の晩期残存が多数認められ、パノラマエックス線写真では下顎両側側切歯の先天性欠如、上顎中切歯、側切歯、および下顎第二大臼歯の歯根短小化傾向が認められた。著名なエナメル質形成不全や進行したしへ齲蝕は認められなかった。精神発達遅滞は軽度で、抜歯、歯石除去、シーラントおよびブラッシング指導を行った。そのうち上顎左側、乳犬歯と第二乳臼歯、下顎左側第一乳臼歯、および右側第二乳臼歯を試料とし、研磨切片および薄切切片(脱灰)を作成し、無染色、ならびにヘマトキシリン・エオジン染色、シュモール染色で、象牙質の観察を行った。
今回観察した乳歯すべてにおいて、異形成構造物が高頻度に観察された。その形態は、エナメル・象牙境に近接して、顆粒状構造物に象牙細管が絡み合うように取り囲んでいるもの、顆粒なしに象牙細管のみが絡み合っているもの、象牙細管が肥厚しているもの、さらに象牙細管に沿って存在する顆粒状、または長楕円形の形態など多様であった。以上のことより、深井らの報告と合わせると、Williams症候群の乳歯に象牙質異形成が観察されることが示唆された。
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