Williams症候群患児5症例の口腔内管理



金城 幸子、森主 宣延、舛元 康浩、宮川 尚之
鹿大・歯・小児歯
小児歯科学雑誌 Vol 41 No 3(通号141)、 2003年 657ページ

Williams症候群はDr.J.C.P Williamsにより報告された、発育障害、精神遅滞、妖精様顔貌、大動脈弁上狭窄・肺動脈閉鎖など心血管系の異常を伴う先天奇形症候群である。性格的特徴として、人なつっこさがあり、発症頻度は20000人に1人と考えられている。発症原因は、現在では7番目染色体のエラスチン遺伝子とその近傍の遺伝子欠損による遺伝子病と考えられており、Fluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いた遺伝子解析法により確定診断が下される。口腔内所見として、45症例を検討したJ.Hertzbergらは、患者の11%に形成不全、齲蝕経験の無い者は59.1%、67.7%に舌突出癖、不正咬合は健常者よりも高頻度であるものの、特有の歯科的所見はないと指摘している。今回我々は、1症例を除きFISHによる遺伝子診断がなされた5症例を経験し、歯科的特徴と実際行われた治療対応の経緯、そして、外来治療への可能性について検討したので報告する。

全身的所見として、肺動脈ならびに大動脈弁上の狭窄(主に軽度)のいずれかが5症例全てにあり、いわゆる精神遅滞も認めた。一症例、情緒的障害による拒食症との診断が下され、他人との触れ合いを恐れる行動を見せた。齲蝕については、2症例が全身麻酔下治療を行うほど重症であり、他は軽度であった。エナメル質形成不全は3症例、歯の数ならびに形態の異状は2症例で認められた。不正咬合は4症例(反対咬合2症例、上顎前突1症例、上下顎前突1症例)で認めた。歯科治療への協力性については、八十島らの報告と同様に、恐怖・不安の行動により抵抗を示すものの、5症例とも、外来での対応は可能で、且つ、受診回数とともに良好化し、定期検診などの受診状況に障害はなかった。

(2006年7月)



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