Williams 症候群



モイラ・スミス著
精神遅滞と発達の遅れ(診断と治療社発行 2008年)63ページ

Williams症候群の患者では、7番染色体の一方の7q11.23領域が欠失している。この症候群は25〜30遺伝子の欠失によって起こる(Tassabehji et al. 1999:資料3-2-26)。大半の患者の欠失は1.5Mbで、少数の患者ではそれより小さな欠失がある。

Williams症候群の患者は特徴的な顔貌をしている。しばしば“妖精様”と記述される口唇の厚い大きい口、下膨れの頬、星状虹彩がある。軽度の成長障害も認める。またしばしば視覚運動統合の低下を示す。IQは41〜80である。Williams症候群の患者は人懐こく社交性に富んでいる。約15%の患者には行動の問題があり、最も多いのは注意欠陥/多動性障害である。

存在する可能性のある田の症状には高カルシウム血症、血管障害(特に大動脈弁上狭窄)、肺動脈狭窄、心室または心房中隔欠損などがある。

Williams症候群はほとんどすべての例が孤発性である。つまり親から子へ伝わることはない。欠失領域は三つの低コピー繰り返し配列に挟まれており、これが誤整列と不等交差を起こす。Bayesら(2003:資料3-2-76)は、1/3の症例では片親は動原体側とテロメア側の繰り返し配列間の染色体7q11.2分節の逆位をヘテロ接合性に持つと報告した。彼らは、染色体7q11.2逆位のヘテロ接合体である親は7q11.2欠失の配偶子をつくる危険性が高まる可能性があることを強調している。Williams症候群の家族例の報告が数例あり、これらの例で最も考えられる原因は親に性腺モザイクがある場合である。ある親の体細胞は正常染色体であった。しかし性腺では正常な細胞系と7q11.2欠失細胞系のニ系統が見られた。この型の性腺モザイクの親には二人目の子供もWilliams症候群になる危険性がある。

少なくとも20個の遺伝子がWilliams症候群の重要な領域に位置している。そして多くの研究者が、特定の遺伝子が特異的な表現型に関与しているかどうかを決定するために研究を行った。エラスチン遺伝子の欠失は大動脈弁上狭窄の原因であることが証明された(Morris and Mervis 2000)。この結果はWilliams症候群の患者と大動脈弁上狭窄単独に患者の研究から証明された。後者の患者はエラスチン遺伝子の欠失または変異をもっていた。

Hoogenraadら(2004)は、Williams症候群の領域に一致知る遺伝子の欠失を導入したマウスの研究を報告した。彼らはLIMK1遺伝子とCYLN2遺伝子(CLIP115遺伝子としても知られている)の二つの遺伝子の欠失がWilliams症候群の神経学的症状の主要な原因であると結論づけた。Limk1遺伝子のノックアウトマウスでは樹状突起神経棘の形態異常とシナプス機能の異常がある。このマウスは行動異常を示す。LIMK1遺伝子はセリンスレオニンキナーゼ」であるLIM1ファミリーのメンバーであり、細胞国家ウとアクチン動態に働く。CYLN2遺伝子は微小管動態が軸索の成長と軸索輸送に影響すると提唱した。

(2008年6月)



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