大動脈弁上狭窄のカテーテル検査



紘輔(もうすぐ10歳)が大動脈弁上狭窄を含めて心臓や血管のカテーテル検査を受けました。 皆様の参考になればと思いその顛末をまとめました。カテーテル検査の一事例とお考え下 さい。

(1999年9月)(2000年7月追加)

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いきさつ:
1歳になる前に心雑音(肺動脈末端狭窄症:PPAS)が見つかり、ウィリアムズ症候 群の確定診断を受けるために1才半の時に静脈カテーテル検査を受けた。その結果、 軽い大動脈弁上狭窄(SVAS)もあることがわかり、それ以後年に1度の定期的に診断を 受けてきた。(資料2-1-02参照)
日記:
  • 6月3日(木):
    心臓の定期検診。心エコーを取る時に泣いてあばれたので、正確なデータがとれ なかった。主治医からは昨年にもカテーテル検査をするように言われていたこともあ り、今回受けることにした。これまでの心エコーや血圧などからは特段悪い徴候は出 ていなかったが、体が成長したことと、大動脈弁上狭窄は心エコーでは実態が判りに くく、どの程度小学校での運動制限が必要かを正確に知るにはカテーテル検査が必要 だと言う主治医の勧めで受けることに決めた。検査は9月7日に決定。
  • 9月6日(月):
    午前中に病院へ行き、外来で簡単な診察を受けた後病室へ。8人部屋の4人め。病 室で四肢の血圧測定や心エコー検査を受ける。血圧は正常、エコー検査では軽い大動 脈弁閉鎖不全が見られる。明日から風呂に入れないため、シャワーを浴びる。夕食後 から絶食。
  • 9月7日(火):
    8時40分くらいから、病棟の処置室で点滴の装着と鎮静剤の投与を受ける。9時 頃にエカテーテルを受ける手術室に移動。ストレッチャ−に乗せられて移動して行く 途中は鎮静剤のためか眠そう。これ以降のことはほとんど覚えていないらしい。
    12時前に検査が終わって戻ってくる。全身麻酔と手術室を出る前に鎮静剤を投与 されており眠っている。導尿はされておらず、点滴以外についている管は酸素マスク だけ。カテーテルを実施した医師から病室で写真を見ながら検査結果の説明を受ける。
    全身麻酔から覚めたのは2時半くらいだった。カテーテルを入れるために針を刺 した右足を固定されているのがいやで文句を言うが、ほとんど眠っている。夕方水と 麦茶を少々飲む。しかし、全身麻酔から覚めた後も内臓は眠っている状態らしく、そ の日の夕食を一口食べたあと吐いてしまう。食事をしなかったので点滴の量が増えた。
  • 9月8日(水):
    朝食も吐いたが、昼食からは食べた。あまり食欲はない。固定されていた足も解 いてもらい歩き回る。点滴も終了。
  • 9月9日(木):
    ほとんど普通の生活に戻る。
  • 9月10日(金):
    カテーテルを実施した医師の研究室でビデオを見ながら詳しく検査結果を聞いた あと、12時前に退院する。抗生剤をもらい、風呂には入れるのは翌日から。足の傷口 にはバンドエイドが貼ってある。
  • 9月13日(月):
    退院後の診察に行く。足の付け根の傷口の周りに青い内出血の跡が見られるが問 題ないとのこと。半年後の検診予定を決めて終わり。翌日から学校に登校した。
診断結果(9月7日):
カテーテル時の写真を見ながら聞いた検査結果は、大動脈弁上狭窄・肺動脈末端狭窄 があるが、どちらも軽度。血圧較差も10mmHgくらいで、学校の体育や水泳などの運動 なら大丈夫。腎動脈・冠動脈にも異常は見当たらない。大動脈弁での血流の逆流(大動 脈弁閉鎖不全)が見られるが、これも軽度で特別処置の必要なし。
診断結果(9月10日):
35mmの映画フィルムのようなフィルムに録画したカテーテルの動画映像を見ながら説 明を受けた。
  • 紘輔の場合は動脈・静脈カテーテルの両方を行ったので、右足の付け根には2箇の 小さな(3mmくらい)傷がある。小さいので縫う必要はないとのこと。
  • 上大静脈、左右の心室、左右の心房、大動脈(冠動脈を含む)、肺動脈、左右の腎 動脈をカテーテルで検査した。また、腎臓と膀胱の全体像も見た。(右の腎臓が左 に比べてかなり下のほうにあるの判ったが、心配ないとのことだった。もともと誰 でも右側が若干下に位置しているらしい。)
  • カテーテルは単なる管で、その先から無色の造影剤を血管内に吹き出しその流れを X線で見る。大動脈弁閉鎖不全の部分は、確かに左心室が膨らむ時に、ほんの少し だが、弁の外側から内側に向かって白い影(造影剤)が流れ込むのが見えた。
  • 映像は正面・横向きの2方向から見る。幅と奥行きの両方が確認されていた。
  • 造影剤は腎臓から尿と共に排泄される。(このため、腎臓と膀胱の形も見える)。紘 輔の場合は、検査個所が多かったので100ccくらいの造影剤を注入した。
カテーテルについて:
測定個所によって形状や直径(1.6mmとか2.0mm)が違うカテーテルを使う。血圧は、 中空のカテーテルを伝わって手元に伝わってくるので、手元で測定する。(カテー テルの先にセンサーがついているわけではない。)
大動脈弁閉鎖不全:
大動脈弁閉鎖不全で少し血液の逆流があると書いたが、これが悪化すると次のような 問題がおきる。 1) せっかく送り出した血液が心室に戻ってきてしまう為、心臓が過負荷になる。 2) 冠動脈は大動脈弁のすぐ外側についていて、血液を送り出した心室が元に戻ると きに冠動脈に血液が流れ込む。しかし、逆流が激しいと十分な血液が冠動脈に回 らずに、心不全につながる。
肺動脈末端狭窄症:
肺動脈弁の直上が細くなっているのが肺動脈弁上狭窄症。それより先の部分が細くな っていればすべて肺動脈末端狭窄症という名前がつくらし。紘輔の場合も左右に分か れた直後の右側肺動脈部分が少し細くなっていた。病名から受け取ったイメージから、 肺動脈のかなり先のほうの細く枝分かれしているあたりが細くなっていると思ってい たが、違っていた。
後日談(2000年7月追加):
入院中にウィリアムズ症候群に関する研究に使いたいので紘輔の血液サンプルを 提供してほしいという依頼があった。検査結果を教えてくれることだけをお願いして 血液を提供した。メールアドレスなど連絡先は知らせてあり、その後心臓の定期検査 にも訪れたが検査結果の連絡はなかった。およそ10ヶ月たった2000年7月、検査結 果を教えてもらうように電子メールで催促したところ、電話で検査結果が届いた。内 容は以下の通り。
  • HPC-1/STX1Aという遺伝子が欠失している。
  • HPC-1/STX1A用のプローブを使ったFISH検査で欠失を確認した。
  • 欠失範囲全体を特定するなどそれ以上の検査は行っていない
  • 他の大学や研究施設に血液を送って別の検査も行っていない
この遺伝子は神経発達に関するものらしが、難しい事は話しても解からないとのこと でそれ以上の詳しい話しはなかった。
(HPC-1/STX1Aについては、3-2-133-2-383-2-47などの資料を、染色体上の位置 は3-2-48を参照してください。 エラスチン遺伝子(ELN)のすぐ近くにあるようです。)

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