ウィリアムズ症候群の総合検査
2002年の春にウィリアムズ症候群総合検査を受けられた時の経験談を頂きました。
(2004年6月)
−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−
翔也が1歳8ヶ月の時、東京の私立病院(循環器小児科&遺伝科)へ1週間の検査入院しウィリアムズ症候群の総合検査を受けました。数ヵ月後にお聞きした、その検査結果の内容です。
この検査は、「遺伝子情報に基づいた包括的医療のための精密検査ということで、いろんな検査をしてその結果を、治療、予防、患者の保育、教育に役立てることを目的とした入院検査」で、ウィリアムノートの3-1-05(ウィリアムス症候群の包括遺伝子医療)にある内容です。
大動脈弁上&肺動脈狭窄で誕生時より通院している病院の主治医の先生から、こちらのWS研究プロジェクトの依頼がきていることを教えていただき、翔也の将来に起こりうるであろう様々な症状や情報が少しでも判ればと思い、参加することにしました。今回のWS研究プロジェクトには、他に4人の方が私たちとは週違いで入院検査をされました。今までに18人、今回含めると23人の方が検査をされているようです。
血液検査、歯科、眼科、耳鼻咽喉科診察、発達検査、レントゲン検査、整形外科診察、心エコー、ホルター心電図(24H)、個人の音楽教室の先生によるリトミック(心身の調和を目的としたリズムによる音楽の教育法)を中心とした音楽教室でした。
翔也の検査の結果、説明、指導いただいた内容:
<血液検査>
カルシウム10.1(通常8.8-10.2)−範囲内だが、高いほう。高カルシウム血症については問題ない。鉄68(通常63-179)、ヘモグロビン13.3(通常14-18)−鉄分が足りないのでもっと摂るようにする。 酸化LDL63.4(通常は58.8なので高い)。LDLとは脂肪(コレステロール)のことで、さびた(酸化した)LDLを調べること)とリン脂質197(通常160-195まで)。 この2つは血管障害を起こしやすい。これらの数値が高いと血管が硬くなる。WSの患者(検査をされた)の方の7割が、数値が高いとされている。血管が硬くなると手足先の細かい動きがにぶくなる。
また、糖分は血液の酸化と関係があり、WSの患者は糖尿病になりやすいそうなので(元来の遺伝子の関係で)、摂取量を減らす。水分補給の際には(翔也は水、麦茶を飲まずジュースしか飲まないので)ソリタ-T顆粒3号(水分の補給と電解質のバランスを整える、ポカリスエットを医療用にしたようなもの)を飲むようにする。酸化LDL対策として、アルコルビン酸(ビタミンC)、ユベラN細粒(コレステロールを下げたり、末梢の血行を改善する)を、今後飲むように指導をうけ、処方箋をもらう。
<遺伝子>
エラスチン遺伝子、シンタキシンの他、全部で17個の遺伝子が欠損している。これらの遺伝子が半分(7番染色体の一対のうち片方のWS欠失範囲内で)がないことによって、どう影響するのかについては、育てていく環境が大きく関わるということと、現在はまだそれぞれの遺伝子の役割が判明していないので不明。 (ウィリアムスノートの3-2-18や3-2-53や3-2-66,3-2-67で、欠損している遺伝子の数は、10から20個、17個以上、19個、とあります。)
現在わかっている遺伝子は、エラスチン(心疾患関係)と隣にあるシンタキシン(ホルモン関係)。エラスチン遺伝子周辺にあるシンタキシンはホルモンをつくる機能があり、ホルモンは喜怒哀楽をつかさどる。この欠損のためにホルモンが完全でない、量がたりないなどがある。
育てる環境を整え、深い愛情をもって育てることが大切。
<歯科>
前歯が2本虫歯になりはじめているので、(粉ミルク以外はジュースしか飲まないため)その代用としてソリタ-T顆粒を飲むことに。 他、かみ合わせは下のあごがでている。
<眼科>
眼圧の検査では、特に問題はない。(視力等検査は年齢が小さいのでできない。)
<耳鼻咽喉科>
のどの入り口が通常の人よりも狭くなっている。(そのためか、未だ離乳食ですが、あせる必要はない。)嗄声(しわがれ声、ハスキー)や笑った後にせきこむことがあるのは入り口が狭いため。
<発達>
診察を受けた1歳8ヶ月の時点でもその後の再診察でも(1歳11ヶ月の時点)、7ヶ月〜8ヶ月の発達程度。発達の現状は“はいはい”がまだできない。おすわり5〜10分まで。(WSの中でも遅いほう。)
<レントゲン&整形外科>
背骨が少し湾曲しているので、今後はなるべく姿勢をよくさせるようにする。(今は年齢が小さくまだ無理なので、将来的に気をつけるように。)
<心エコー、ホルター心電図)>
大動脈弁上の程度は軽く、今後の検査は1年に1度程度でよい。(それまでは2ヶ月毎でした。)通院している地元の病院では、狭窄の程度については言ってもらえなかったのですが、こちらの病院でははっきりと軽いと言ってもらえ、安心しました。(同じ心エコーの機械や検査なので疑問に思い質問すると、それは診察の経験数(WSを含め)の違いということで納得しました。)大動脈弁上狭窄については5〜6歳ぐらいまでは問題はなく、将来については進行する場合も有得るが、それまで今のところは問題ない。肺動脈狭窄についてはごく軽く、今後もほとんど快方に向かう。(一般的に肺動脈狭窄についてはほとんどの方が快方に向かい、問題なくなるということでした。)
<音楽教室>
個人の音楽教室の先生による(WSの生徒7人や一般の生徒に、リトミックをオリジナルで構成し、ピアノも教えておられる方)、CD音楽をききながら、体全体をリズムにのせるリトミックを1時間程。(翔也はまだ年齢が小さいためか、反応はあまりない様子でした。)
総合検査の先生は、音楽を通して楽しく才能を育て、音楽から他のことにも興味を広げていくことで、心も成長していくように、とのお考えをもっておられて、今後音楽教室などに通うこと、母親の私自身が翔也に音楽を教えていくことを(リトミックのこと)すすめていただきました。(WSの生徒さんたちがこの音楽教室に通うようになって、格段と成長されたと聞きました。)
翔也が1歳になったばかりの頃から通っている療育施設での理学療法の訓練では、いつも大泣きしているのですが、もっと楽しんで喜びながら音楽を使って運動させるようにすることをすすめていただきました。
その後は、翔也にはつらいと思える理学療法の訓練も医学的根拠に基づき研究されたものだからと信じて続けることにし、楽しみながらのリトミックも始めました。
目次に戻る